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院長の部屋

ごあいさつ

病院長の画像

2014年4月

2014年度を迎え、地域包括ケアシステムの実現へ向けて

はじめに

2014年2月には何十年ぶりかの大雪があり、そして今、花見シーズンも終わろうとしています。桜が散ったものの、その華やいだ何とも言えない余韻は、派遣医師の交代や新入職の新しい顔ぶれと見慣れた職員の配置換えに伴うやや緊張した雰囲気と相まって、病院内に活気を与えているようです。今回の人事異動で、4年間病院運営に辣腕を発揮された中尾清美事務長が本庁(役場)に栄転されました。痛手ではありますが、公務員の宿命で仕方がありません。本庁でもさらなるご活躍をご祈念申し上げたいと思います。そして、今後は事務次長から昇任された江藤良一新事務長の手腕に大いに期待したいと思います。

さて、院長就任3年目に入りました。「患者さん目線の病院づくり」、「改革改善なくして成長なし」のスローガンを掲げ努力してまいりましたが、依然として課題は多く、道のりは険しいものです。「ローマは1日してならず」、「千里の道も一歩から」ということわざを思い出し、気を取り直して、新年度に向けて頑張るつもりでいます。

病床の見直し

本年度は診療報酬が改定されます。消費税増税もあって、全体に厳しい状況ですが、特に7対1急性期病院にとってはきびしい改定となり、その看護体制の見直しを迫られています。当院は身の丈にあった10対1看護体制としており、この点に関しての影響はそれほど大きくはありません。しかし、病床機能の報告制度も予定されていますし、病床機能の見直しは喫緊の大きな課題です。当院の入院は、後方病院もない地域であるため、急性期、回復期、慢性期、療養期など、様々なステージの患者さんが混在しており、ケアミックス型の病床機能に進化させることが求められています。人口減少が進み、超高齢化社会となり、120床(内科系病棟と外科系病棟でそれぞれ60床ずつ)すべてを一般病床で対応していることはいろんな意味で無理が出てきているのです。一般病床であることで、在院日数21日以内の縛りがあり、長期のリハビリを要する患者さんや慢性期療養患者さんは、熊本県の療養型病院に転院してもらっているのが現実です。その結果、外科や整形外科の急性期~回復期の患者さんの多い外科系病棟は在宅復帰率も高く、80%前後の病床利用率を維持できていますが、心疾患や肺疾患などの慢性疾患の急性増悪と寛解を繰り返している高齢の患者さんの多い内科病棟は50~60%台の低い病床利用率となっています。患者さんやその家族の皆さんからも「何故、ベッドが空いているのに退(転)院させられるのか?」という疑問やクレームも珍しくありません。これらは内科医師減少に伴う内科入院患者さんの減少だけでなく、病床機能と実際の医療ニーズのミスマッチも大いに関係しています。 さらに本年度から、これまで在院日数短縮に貢献していた短期入院疾患のいくつかが除外され、また、逆にこれまで在院日数計算から除外が可能であった長期入院特定疾患の扱いが、在院日数計算から除外して安い包括入院料を選択するか、あるいは除外せず出来高にするか、という選択を迫られることになり、ますます、在位日数の縛りが厳しくなりました。
以上のような医療事情の変化に鑑み、去年から、副院長、事務長や総師長に回復期病床や療養病床の導入を検討してもらっていましたが、病棟の増改築は病棟の構造上、不可能なことが判明しました。また、現病棟のままで4人部屋を3人部屋として療養病床とする方法も全く不可能ではないようですが、病床が不足し、現状のままでは無理です。そこで新たに回復期リハビリ機能や療養機能を持たせた病棟建設が病院の裏山を造成して可能かどうか、検討するための調査・概略設計予算を早めに確保しておいた方がよいとの事務長の判断で昨年度末の補正予算に計上した結果、ありがたいことに町議会を通していただきました。療養病床の確保は議会でも期待されているようでした。しかし、国の基本方針はあくまでも在宅であり、リハビリを強化した、在宅との行き来をイメージした療養病床機能を予定しています。さらに、もともと外来も手狭になっていたことや、病院機能強化により、必要となった中央機材室、カルテ管理室、地域連携室、システム情報管理室、医療相談室、医師事務補助の事務部屋、研修室などが必要になってきたこと、会議室などの病院スペースが手狭になってきていたこと、来るべき南海トラフ地震などの耐震対策やヘリポート設置、後方支援機能なども充実する必要があり、病院の将来構想とリンクさせて新棟を建設する必要があるため、新病棟構想委員会も立ち上げることにしています。

西臼杵郡内での連携強化

また、中山間地の病院の医師確保問題も待ったなしの状態が続いています。隣町の五ヶ瀬町立病院にも、本年度4月からの常勤医師の1名減に伴った、医師不足による当直医不足状態になることが予測されたため、4月からの月2回の日曜当直派遣依頼が当院にありました。当院の医局会で相談し、4月から当院内科が、県の自治医大卒業派遣師が1名増員の4名体制となることや今年の1月から当直負担軽減のために私が月2回以上の日曜日の当直を引き受けていたことで、その負担軽減分を日曜当直応援に回すことで、医師たちの了解が得られました。しかしながら、このような綱渡りがいつまでも続くわけではありませんので、今後も西臼杵郡の病院同士の連携を強化して、限られた医療資源を効率的に利用していく必要があります。ただ、朗報もあり、熊大神経内科安東由喜雄教授のご高配により、月一回第4木曜のみではありますが、神経内科の専門外来が開設します。高齢者は神経疾患も多いので、大変ありがたいことです。これらがうまく発展して、安定した医療体制につながるよう、努力していきたいと思います。
救急体制に関しては、いよいよ西臼杵広域救急消防の常備化が1年後に迫ってきました。しかし、救急車の受け入れ先である3町立病院相互の話し合いが遅れておりましたので、西臼杵消防常備化準備室の三星文男専門監と工藤誠也係長の同席のもとで、西臼杵3町立病院の病院長事務長会議を先日開催しました。日之影の上田院長はご都合が悪く、欠席されましたが、救急搬送のルールや西臼杵メディカルコントロール協議会設置などの総論に関しては、有意義な話ができたものと考えております。そして今後は事務局を高千穂町立病院において、3か月ごとに病院長・事務長会議を開催していくことを申し合わせました。また、この会は、西臼杵3公立病院協議会として発展させ、救急体制だけではなく、今後の西臼杵郡の医療連携・医療体制についても相談していきながら、相互関係を強めて行ければと考えております。

地域包括ケアシステムを目指して

新年のホームページの挨拶でも述べましたが、地域住民が西臼杵の地元で最後まで幸せに暮らすには2025年を目標に地域包括ケアシステムを完成させる必要があり、そのために病院の基本理念を「西臼杵地域の中核病院として地域住民の皆様に安全で質の高い医療を提供するとともに、地域包括ケアシステムを推進します」とし、それを実現するための基本方針も新たに定めました。3月に院内研修会を開いて、職員にこの理念や基本方針を徹底しました。病院の進む方向を明確に示したことに加え、これまでも終末期医療を中心とした勉強会でリーダーシップを発揮された当院の興梠知子副院長が、将来に向けた医療福祉介護の具体的な対策を示した提言書をまとめた実績が町に評価されて、地域包括ケアシステムの整備に向けての中心的部署である高千穂町保健福祉総合センター「げんき荘」の所長をこの4月より兼任で務めることになりました。これにより2025年に向け、一丸となって突っ走る体制が出来たことになります。まずは24時間在宅介護支援ができる機能を持たせた小規模多機能型居宅介護のモデル地区を作り、ノウハウを蓄積し、そこで研修システムを作り、人材を育成し、それがうまくいくようになったら、各コミュニティにひろげていくやり方がいいように思います。

おわりに

最後に来年のことではありますが、平成27年の5月15日(金)、16日(土)に国診協(全国国民健康保険診療施設協議会)の研修会である第29回現地医療研究会が美郷町包括医療局長の金丸吉昌先生を会長として宮崎で開催され、その視察先にわが町の高千穂町立病院、ときわ園、げんき荘が予定されています。全国から国保病院の医師、コメディカル、事務職が300名ほど参加する全国研修会です。地域包括ケアシステムの高千穂モデルを全国に発信できるように、準備を進めていきますので、本年度もよろしくお願い致します。

平成26年4月
病院長 箕田 誠司

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