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研修医奮闘記

研修医奮闘記

当院にて地域医療研修に参加した研修医のコメントを掲載しています。

平成28年8月

地域医療とは

伊藤歌織
宮崎大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター

 高千穂での一か月が私に問いかけたことは、「地域医療とは」であると思う。後期高齢者の割合が現在の日本の平均を上回る三割を超え、主要産業である農業の主力が高齢者である現実、医師確保がなかなか難しく、一つ一つと科が減っていく、三次救急が可能な病院には救急車で1時間かかる。そんな中で闘い続けている医師・看護師・病院スタッフの一片を覗かせて頂いた。

 高千穂は、とても美しい町である。綺麗に耕された段々畑や清らかな川、青々としたありのままの自然は圧巻の風景である。一方で、2008年には延岡とを結ぶ高千穂線が廃線となり、今年の熊本地震により断裂した道が現在も通行止めとなっており、アクセスはなかなか厳しいものがある。高千穂を取り巻く環境は、決して優しいものではない。私が研修で訪れた病院に入院適応はないと思われる寝たきりのおばあさんがいた。なぜ退院できないのですかと先生に尋ねると、「家族が近くにいないしなかなか協力も得られない。独居の上、他の施設もいっぱいで帰せない。」と言われた。高齢者の割合が高い高千穂では、認知症患者の人数も自然と多くなる。介護への理解や協力の難しさは当事者でないとなかなかわからないものだ。在宅医療を進める国とは裏腹に、町は在宅介護の限界を叫んでいた。

 「地域医療って家族みたいな感じなんだよね。」
 
開業医の先生のこの言葉は地域医療の姿を言い表していると思う。受診をすれば診察はもとより家族の話、最近の仕事の話、悩み事、様々なことを話す。患者が笑顔になる。何かしらの症状がそれで良くなるわけではない、しかしそのコミュニケーションこそが地域医療で大事な“医療”の一つだと教わった気がした。

 一か月という短い期間ではあるが、高千穂国民保険病院で学べることはとても多い。外来や入院に始まり、訪問リハ・看護、特養や老健施設、地域に根付く医院、多くの経験をさせて頂いた。大変な環境の中でも患者の為にと奮闘する様々なスタッフに、自分の医師としての在り方を問われたような気がする。いつも暖かく笑顔で接して頂いた院長先生を始め、医師、看護師、スタッフの方々には心から感謝を述べたい。ここで学んだ多くの事を今後の研修、医師生活に生かしていきたいと思う。

訪問診療で102歳のおばあちゃんけんこうフェス2016に参加しました
 

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