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院長の部屋

ごあいさつ

病院長の画像

2012年9月

高千穂町国民保険病院のホームページへお越し下さいまして、ありがとうございます。

院長就任から半年になりましたが、今回は高千穂を中心に西臼杵地区の住民の皆様に対して現在、考えていることをお話ししたいと思います。

内科常勤医の病気休職長期化に伴い、いろいろと医師確保に大学関係医局にもかけあっていますが、医師がいないということで、難しい状況です。特に患者数の多い内科外来に関しては、常勤医2名では対応が困難ということで、現在は美郷町西郷病院と五ヶ瀬町立病院から週1日ずつ隔週ではありますが、応援をいただき、応援のない週は外科医師で対応しています。

地域住民が安心して生活できるためには、病気にかかっても安心して治療が受けられる信頼できる病院の存在が不可欠です。特に救急患者では、一刻も早く、安心・安全で良質な医療の提供がなされる必要があります。他に行く病院がないから、行きたい病院はあるが遠いので、仕方なくかかる病院ではその責任が果たせないのは言うまでもありません。

宮崎県は平成20年策定の医療計画においてすべての県民が、質の高い医療サービスを、安心して受けられる医療体制の確立を基本理念としています。そして、基本方針に①切れ目のない医療提供体制の構築、②安心安全な医療体制の充実、③山間へき地の医療確保、④医療従事者の養成・確保、⑤県民への情報提供を掲げ、さらに4疾患(脳卒中、急性心筋梗塞、がん、糖尿病、精神疾患)6事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療、在宅医療・介護))に対する医療体制を策定しています。

4疾患のうち、急性期疾患である脳卒中と急性心筋梗塞ならびに慢性疾患である癌において、当病院での完結は一部に限られており、糖尿病においては完結は可能であるものの、専門医は病気休職により不在の状況であります。さらに6事業に関しても、当院での完結はごく限定的です。

この理由としては、へき地であった西臼杵地域の事情として、個人の開業医が少なかったため、町立病院はこれらの補完・受け皿となって発展してきた経緯があります。そのため、予算や医師確保がままならない限られた医療資源のなかでは、外来機能の充実と一時救急や軽症の二次救急患者の診療体制の確立が現実的にまずは優先されました。しかし、そのような中で、かなり早い時期から専門医療として、人工透析を行っていることは、特筆すべきことで、患者ニーズを考えて医療資源の投資行えば、へき地でも高度医療ができる可能性を示しています。

以上に述べたように、現在の町立病院は、外来診療や一次救急、軽症の二次救急や二次医療が中心であり、4疾患6事業に代表される救急医療や専門医療への対応は不十分です。私は当院に赴任するまでは、へき地の病院は財政も厳しく、医師の確保も困難なので、地域医療計画でも述べられているように、最初から高度医療や専門医療は都市部の大病院にまかせて、対応困難な救急医療や専門医療が必要な患者さんは都市部の大病院へ搬送したり、紹介すればいいという対応で、仕方がないとの考えを持っていました。しかし、実際に赴任してみると、一刻を争う救急の患者さんでは搬送中に亡くなった患者さんもおられましたし、地元での専門治療を強く希望される患者さんは少なくなくありません。一刻を争う脳卒中や心筋梗塞、緊急手術が必要な外科系の疾患では、救命のタイミングが長時間の搬送のために奪われるだけでなく、心理的や肉体的にも患者さんやご家族に多大の負担を強いています。地元で完結する救急医療・高度医療は経済的に成り立たないからということで、30分程度の搬送時間ならいざ知らず、1時間以上かかる高次病院への搬送を前提としたような、悪く言えば、最初から命を切り捨てるような救急医療体制の枠組みは、へき地だからといって、医学の進歩した現代では許されることではないと考えるようになりました。もちろん、このような問題の解決の一助として、宮崎県でもドクターヘリが運行を開始しましたが、根本的な解決ではありません。

これまで述べたような問題点を考慮し、生き残りをかけた今後の抜本的な病院改革の基本はコスト削減、ムダをなくして、その上でのさらなる医療の質と病院機能の向上より、患者数増加をはかり、ひいては経営の安定をはかることです。その実現化の具体策についていくつか述べさせていただきます。

まず、第一にはとにかく医療の質の向上です。病院の質は資格を持った専門職全員の総合力で決まります。そのために、医師の診療能力向上や看護師・薬剤師・検査技師、医事職員の仕事力の向上を図るためのセミナー開催や学会活動の援助、地域医療支援病院から指導に来てもらったり、逆に研修に行ったり、人材育成プログラムなどの勉強会の開催も活発化させたいと考えております。以上のように、医師やコメディカルが就職したいと思うような魅力的な職場環境づくりをしながら、優秀な医師やコメディカルの確保にはこれまで以上に地道に努力してまいります。

第二に救急医療の充実が必要です。現在の少ない医師数やスタッフで救急を充実するためには、工夫が必要です。特に当院で完結出来ない部分は、遠隔画像診断システム導入や県立延岡病院、済生会熊本病院、熊本赤十字病院などとの病・病連携ネットワークの強化やその整備をさらに推し進めて、患者さんを迅速に適切に不安なく、連携病院へアクセスできるようにしなければなりません。また、特に夜間救急には医師や看護師、薬剤師や検査技師などの体力や気力の充実が必要で、疲弊していては継続できません。そこで、お互いの役割を補完し合うチーム医療の推進や診療に関する資格が必要でない業務は医療秘書や看護助手、事務職員に委譲し、専門職が本来の診療に専念出来るような業務の効率化が必要です。しかし、これらの努力だけでは限界もあり、将来的には脳卒中や心筋梗塞に関してはある程度、地元で完結できるように救急診療機能の充実を考えております。

第三ですが、病院機能の見直し、再構築による質の向上に関しましては、日本病院機能評価機構の受審により、日本標準レベルの病院機能に整備することが必要であると考えております。今後、早急に受審までの計画を立てる予定でおります。

第四に患者満足度を上げるために外来待ち時間対策や病棟などの院内環境の改善に努めまる必要があります。すでに外来患者アンケートも実施し、現在その内容を分析し、今後の改善に役立てる予定です。また、患者さんだけでなく、職員満足度にも配慮した職場環境づくりに努めます。

第五に病院の将来構想の検討が必要で、診療科目、診療内容や病床機能の見直し、病院の規模を今後どうしていくのか、建て替えの時期などを、議論する必要があります。また、最近は患者さんの高齢化に伴い、介護が必要な入院患者さんが増加して、看護も大変になっております。今後は医療だけでなく、予防医学や介護・リハビリの充実などの高齢者福祉の領域を含めた包括的な活動が地域の病院には要求されます。そういった意味で、地域住民の期待にこたえられるように、将来的には病院を中心とした総合医療福祉センターを目指して整備していきたいと考えております。これらも住民の皆様や役場とも相談しながら、計画を立ててまいります。

その他にも救急医療におけるコンビニ受診問題や終末期医療の在り方など、住民の方々とともに考えていく住民参加が必要な問題も多くあります。公立病院改革ガイドラインで示されたように集約化による病院スケールアップあるいはネットワーク化、公営法の全適の是非、運営形態の変革、医療提供形態の変革なども、あらゆる観点からの検討が必要です。住民の方々には、役所任せの医療ではなく、地域の医療のレベルや内容を決めていくのは、そこに住んでいる住民自身であるということを再認識していただき、今回述べさせていただいたビジョンを具体化させるための中長期事業計画を含め、今後は住民の方々に高千穂を中心とした西臼杵の医療をどうしていくのか、積極的に議論に参加していただきたいと考えています。住民の皆さまには、是非とも私の考えをご理解頂いた上で、御支援を心からお願いします。

平成24年9月
病院長 箕田 誠司

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